ラグドールの健康について調べると、必ず「肥大型心筋症」という病名に行き当たります。猫種団体CFAも、この猫種で見つかっている遺伝性疾患としてこの病気の名前を挙げています。
ところが、日本のペット保険のデータを見ると違う姿が現れます。アニコム損保が11,442頭のラグドールを対象に集計した統計で、心筋症は「他猫種に比べ罹りやすい疾患」ではなく、「他猫種に比べ罹りにくい疾患」の第5位に入っているのです。
この2つは矛盾していません。両方を知ってはじめて、この猫種の健康管理の輪郭が見えてきます。そして同じ統計は、ラグドールで実際に多いのは心臓ではなく、まったく別の場所の不調だということも示しています。この記事では、公的な情報源と日本の統計を突き合わせながら整理します。
⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。運営者は獣医師ではありません。記事の内容は診断や治療の代わりにはなりません。愛猫の体調で気になることがあれば、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。

「心筋症の猫種」という通説を、2つの情報源で確かめる
まず、CFAがラグドールの健康についてどう書いているかを見ます。
多様な遺伝的背景を持つため、比較的健康である。この猫種では1つの遺伝性疾患――肥大型心筋症――が見つかっているが、ブリーダーは現在この検査を日常的に行っており、保因猫を遺伝子プールから取り除く取り組みを進めている
【出典:The Cat Fanciers’ Association「Ragdoll」】
「1つの遺伝性疾患」と限定されている点が重要です。ラグドールで確立している遺伝性疾患は、今のところ心筋症だけということになります。
一方、アニコム損保の家庭どうぶつ白書2025は、ラグドール11,442頭(0〜12歳)の品種別統計を掲載しています。そこでの心筋症の扱いは次のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 請求頭数 | 98頭 |
| 請求割合(ラグドール/猫全体) | 0.9%/1.2% |
| オッズ比 | 0.71(95%信頼区間 0.58〜0.87) |
| 最頻値年齢 | 2歳 |
| 年間診療費 | 平均88,697円/中央値48,400円 |
【出典:アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書2025」第2部第2章 品種別の統計(2-2-108)】
オッズ比が1を下回り、信頼区間の上限も1以下です。この集団では、ラグドールの心筋症は猫全体より請求割合が低いという結果になっています。
食い違って見えますが、CFAが述べているのは「この猫種に固有の原因が特定されている」という事実であって、頻度が高いとは書いていません。固有の遺伝的原因が判明していることと、集団としての発生頻度が高いことは別の話です。 ただし、この数字を安心材料として読むことはできません。理由は次の項で説明します。
肥大型心筋症|頻度は低い。ただし、当たると若い
ラグドールの心筋症には、原因となる遺伝子の変異が特定されています。心筋ミオシン結合タンパクC遺伝子(MYBPC3)に生じる、R820Wと呼ばれる1塩基の変化です。カリフォルニア大学デービス校の獣医遺伝学研究所は、遺伝形式を「常染色体優性(不完全浸透)」とし、検査結果ごとに次のように説明しています。
| 検査結果 | 変異のコピー数 | 研究所の説明 |
|---|---|---|
| N/N | 0 | この変異による心筋症リスクの上昇は予測されない。子に伝えることもない |
| N/HCMrd | 1 | リスクが高まる可能性がある。多くは症状を示さず、通常の寿命を全うすることもある |
| HCMrd/HCMrd | 2 | 重い症状を発症するリスクが高い。多くは生後1〜2歳の間 |
【出典:UC Davis Veterinary Genetics Laboratory「Hypertrophic Cardiomyopathy (HCM) in Ragdolls」】
英国のラングフォード獣医検査室は、実際の生存データにも触れています。
この変異にホモ接合のラグドールの半数以上は、5年生存しなかった。一方で、ホモ接合の約20%が12歳前後で生存していたことは、不完全浸透を示している
同検査室は、ラグドール集団におけるこの変異の保有率を約13%としています。
【出典:Langford Vets「Ragdoll Hypertrophic Cardiomyopathy (RD-HCM)」】
先ほどの統計で、心筋症の最頻値年齢は2歳でした。アニコムの品種別統計は多くの傷病で最頻値年齢が0歳ですから、2歳という数字は目立ちます。日本の保険データと海外の遺伝学の記述は、発症する個体は若いという点で一致しています。
保険統計の年齢は契約者の年齢構成の影響を受けるため、年齢の傾向は参考値として読んでください。
「請求割合が低い」を安心と読めない理由
米国獣医内科学会が2020年に公表した猫の心筋症に関する合意声明は、この病気の性質をこう述べています。
心筋症の猫のほとんどは、無症状の段階にある
さらに聴診についても、「罹患した猫の多くには、聴診上の異常がない」と書かれています。
保険の請求データは、動物病院にかかった記録です。無症状のまま見つかっていない個体は、そこに含まれません。請求ベースの数字は、実態より低く出る可能性があります。
遺伝子検査が陰性でも発症する
同じ合意声明は、もうひとつ明確に述べています。
これらのMYBPC3変異が陰性であったメインクーンとラグドールで、心筋症が報告されている。したがって、これらの変異を持たないメインクーンとラグドールでも、定期的な心エコー検査を検討すべきである
ラングフォード獣医検査室も「まだ特定されていない他の変異によって心疾患を発症する猫がいる可能性がある」と書いています。遺伝子検査の陰性は、この変異を持たないことの証明であって、心筋症にならないことの証明ではありません。

気づき方|行動では気づけない。呼吸数を数える
ここにラグドール特有の事情が重なります。CFAは、この猫種の活動性を「適度に活動的で、遊びの時間を楽しむが、それを要求することはない」と書いています。
もともと自分から遊びをせがまない猫種です。そのため「遊ばなくなった」「動かなくなった」という変化が、気質の範囲なのか体調なのか区別がつきません。静かな病気と、静かな猫の組み合わせです。この猫種では、行動の観察が当てになりません。
だから、数値に置き換えます。米国獣医内科学会の合意声明は、飼い主が家庭でできる観察として次の方法を挙げています。
飼い主は猫の安静時または睡眠時の呼吸数を観察し、1分あたり30回未満に保つことを目標とすることが推奨される
手順は難しくありません。
- 猫が眠っているとき、または完全に休んでいるときに測ります
- 胸やお腹が上下する回数を数えます。吸って吐いてで1回です
- 15秒間数えて4倍しても構いません。慣れたら1分間測ります
- 目安は1分あたり30回未満です
週に1回、同じ条件で記録してください。大切なのは1回の数値より、その猫の平常値を知っておくことです。
⚠️ 安静時の呼吸数が繰り返し30回を超える、口を開けて呼吸している、呼吸が速く苦しそうといった状態は、様子を見ずに受診してください。合意声明は、心不全でもっとも多い症状として努力性の呼吸を挙げています。

体が完成するのは4歳|体重の物差しが効かない期間
CFAは、ラグドールの成長についてこう記しています。
ラグドールは成熟が遅く、毛色が完成するのは2歳、体の大きさと体重が完成するのは4歳である。成熟したオスの体重が20ポンドに達するか、それを超えることは珍しくない。メスは通常それより小さい
同じページには「食べることが好きなことで知られ、肥満のリスクがある。適正体重を保てるよう、与える量を管理すること」という注意もあります。
この2つを並べると、この猫種の難しさが見えてきます。4歳までは、体重が増え続けることが正常です。 そのため「増えたから太った」という判断が、他の猫種のようには使えません。1歳で体が完成する猫種であれば、その後の増加は脂肪と考えられます。ラグドールにはその物差しが4年間ありません。
判断は体重計の数字ではなく、体に触れて行います。
- 背中や肋骨を軽く触ったとき、骨の感触が分かるか
- 上から見たとき、腰にゆるやかなくびれがあるか
- 横から見たとき、お腹のラインが後ろ足に向かって上がっているか
骨の感触が分かりにくくなってきたら、体重が増えていても成長ではない可能性があります。月1回の体重測定は続けたうえで、数字は増加のペースを見るために使い、太っているかどうかは手で確かめてください。

なお、心筋症の重い症状が出やすい生後1〜2歳は、この「まだ体が出来上がっていない」期間にすっぽり入ります。元気がない、寝てばかりいるという変化があっても「まだ成長中だから」と受け止めやすい時期です。
日本のデータで実際に多い不調
アニコムの統計で「他猫種に比べ罹りやすい」とされた疾患のうち、請求割合が高いものを抜き出したのが下の表です。
| 傷病名 | ラグドール | 猫全体 | オッズ比 | 年間診療費(平均) |
|---|---|---|---|---|
| 嘔吐/下痢/血便(原因未定) | 11.3% | 8.9% | 1.33 | 17,099円 |
| 膀胱炎 | 6.2% | 4.4% | 1.47 | 18,596円 |
| 胃炎/胃腸炎/腸炎 | 5.9% | 4.6% | 1.32 | 19,214円 |
| その他の皮膚疾患 | 5.2% | 4.0% | 1.36 | 9,788円 |
| 皮膚炎(原因未定) | 3.7% | 2.6% | 1.45 | 10,870円 |
| くしゃみ/鼻汁(原因未定) | 2.3% | 1.4% | 1.68 | 10,220円 |
| 消化管内異物/誤飲 | 2.1% | 1.6% | 1.27 | 52,323円 |
| 猫伝染性鼻気管炎 | 1.3% | 0.9% | 1.55 | 11,093円 |
| 脱毛(原因未定) | 1.0% | 0.7% | 1.50 | 9,171円 |
| 発咳(原因未定) | 0.8% | 0.6% | 1.35 | 14,874円 |
| 猫伝染性腹膜炎 | 0.7% | 0.5% | 1.47 | 316,687円 |
| 疥癬 | 0.6% | 0.3% | 2.22 | 18,846円 |
| 耳疥癬・ミミヒゼンダニ症 | 0.6% | 0.3% | 2.21 | 18,770円 |
心臓の病気は、この表に出てきません。ラグドールと暮らすうえで実際に遭遇しやすいのは、お腹と皮膚のトラブルです。
① 消化器|請求割合の最上位
嘔吐・下痢・血便が11.3%、胃炎・胃腸炎・腸炎が5.9%。どちらも猫全体を上回っています。吐く回数が増えた、吐いたあとぐったりしている、下痢が2日以上続く、便に血が混じる——これらが気づきたいサインです。
猫は毛づくろいで飲み込んだ毛を吐くことがあります。ただし「猫は吐くもの」と考えて回数を数えていないと、増えたことに気づけません。吐いた日を記録するところから始めてください。カレンダーに印をつけるだけで十分です。週に何回なのかが言えると、動物病院での説明も早くなります。
② 誤飲・消化管内異物|費用が跳ね上がる
請求割合は2.1%とそれほど高くありませんが、年間診療費の平均が52,323円と、他の消化器トラブルの3倍近くになります。中央値も16,000円で、開きが大きい項目です。手術が必要になる場合があるためと考えられます。
ひも、リボン、ヘアゴム、ビニール袋、糸のついた布のおもちゃ、造花、観葉植物の葉。これらは猫が自分で遊べない場所にしまってください。とくにひも状のものは、飲み込むと腸が縮んで手繰り寄せられ、重い障害を起こすことがあります。
⚠️ ひもや糸を飲み込んだ可能性がある場合、口やお尻から出ている部分を引っ張らないでください。腸を傷つけることがあります。すぐに動物病院に連絡してください。
③ 膀胱炎|猫全体より高い
請求割合6.2%は、この表のなかでも上位です。トイレに行く回数が増えたのに尿の量が少ない、トイレの中で長くしゃがんでいる、排尿のときに鳴く、尿に血が混じる、トイレ以外の場所で排泄するようになった——これらが気づきたいサインです。
⚠️ オス猫で「トイレに行くのに尿が出ない」状態は緊急です。 尿道が詰まると短時間で全身の状態が悪化します。その日のうちに受診してください。
猫はもともと水をあまり飲まない動物で、尿が濃くなりやすい体のつくりをしています。水の器を複数の部屋に置く、循環式の給水器を試す、ウェットフードを併用するなど、水分をとる機会を増やす工夫が基本になります。トイレを清潔に保ち、我慢させないことも大切です。
④ 皮膚|合計すると消化器に次ぐ
「その他の皮膚疾患」5.2%、「皮膚炎」3.7%、「脱毛」1.0%、「皮膚の痒み」0.8%。個別では目立ちませんが、合計すると相当な割合になります。
CFAはラグドールの被毛を「厚く密な下毛がないため、抜け毛ともつれが少ない」と記しています。手入れの手間は少ない猫種ですが、それは皮膚を見なくてよいという意味ではありません。 週1〜2回のコーミングは、毛のもつれを取ると同時に、皮膚の赤み、かさぶた、脱毛、しこりに気づく機会になります。
セミロングの被毛は、皮膚のトラブルを隠します。表面をなでるだけでは分かりません。コームを入れて毛を分け、地肌が見える状態で確認してください。とくに顎の下、脇の下、内股、しっぽの付け根は見落としやすい場所です。
⑤ 疥癬・耳疥癬|オッズ比では全項目の1位と2位
請求割合は疥癬0.6%、耳疥癬0.6%と高くありません。しかし猫全体はどちらも0.3%で、オッズ比2.22と2.21は「罹りやすい疾患」15項目のなかで1位と2位です。この統計でラグドールがもっとも際立っているのは、実はここです。
どちらもダニによる寄生虫の病気で、強いかゆみが出ます。最頻値年齢は0歳。迎えて間もない時期に多いということです。
- 耳を頻繁にかく、頭を振る
- 耳の中に黒い乾いた汚れがたまる
- 顔まわり、耳のふち、首をかき壊す
迎えた直後は、耳の中を見る習慣をつけてください。 黒い汚れが増えていないかを確認します。市販の耳掃除用品で対処しようとせず、動物病院で原因を確かめてください。ダニであれば、掃除では解決しません。

⑥ 上部気道|くしゃみ・鼻汁・咳
くしゃみ・鼻汁が2.3%(猫全体1.4%、オッズ比1.68)、猫伝染性鼻気管炎が1.3%(0.9%、1.55)、発咳が0.8%(0.6%、1.35)。呼吸に関わる項目が、そろって猫全体を上回っています。
猫伝染性鼻気管炎はヘルペスウイルスによるもので、いわゆる猫風邪の代表です。一度感染すると体内にウイルスが残り、ストレスや体調の変化で再発することがあります。
⚠️ 呼吸数を数える習慣とあわせて、鼻がつまっていないかも見てください。鼻づまりがあると呼吸数は上がります。 数字だけを見て心臓を疑う前に、鼻の状態を確認してください。
咳は、猫ではもともと目立ちにくい症状です。毛玉を吐こうとする動作と見分けがつきにくく、見過ごされがちです。首を前に伸ばして体を低くし、乾いた音を繰り返すようなら、動画を撮って動物病院で見せてください。
⑦ 猫伝染性腹膜炎|金額が桁違い
請求割合は0.7%(猫全体0.5%)ですが、年間診療費が平均316,687円・中央値112,613円と、他の傷病と桁が違います。最頻値年齢は0歳です。
若い時期に起こりうること、そして起きたときの経済的負担が大きいことは、迎える前に知っておいてよい情報です。治療法は近年変化しているため、診断と治療方針は動物病院で確認してください。

「罹りにくい」とされた疾患
同じ統計で、ラグドールが猫全体より請求割合の低かった疾患です。
| 傷病名 | ラグドール | 猫全体 | オッズ比 | 最頻値年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 歩行異常/跛行/四肢の痛み | 0.5% | 0.9% | 0.54 | 0歳 |
| 慢性腎臓病(腎不全含む) | 1.2% | 2.0% | 0.60 | 9歳・11歳 |
| 歯周病/歯肉炎 | 0.9% | 1.4% | 0.64 | 0歳 |
| 膀胱結石 | 0.6% | 0.9% | 0.67 | 1歳 |
| 心筋症 | 0.9% | 1.2% | 0.71 | 2歳 |
猫の代表的な病気である慢性腎臓病が、猫全体の6割ほどの請求割合にとどまっている点は注目に値します。ただし年間診療費は平均123,296円で、起きたときの負担は小さくありません。
もうひとつ、この表の1位が「歩行異常/跛行/四肢の痛み」(オッズ比0.54)であることは、覚えておく価値があります。ラグドールは大型の猫種ですが、この統計を見るかぎり、足を痛がって受診することがもっとも少ない猫種のひとつです。
裏を返すと、この猫種で歩き方の異常が起きたとき、それを「よくある足のトラブル」として説明しにくいということでもあります。次の項につながる話です。
同じ白書の2023年度データでは、ラグドールの平均寿命は15.1歳です。掲載されている20猫種のうち日本猫(15.3歳)に次ぐ数字で、混血猫(14.9歳)を上回っています(契約データから作成したカレント生命表による、0歳時点の平均余命)。
長生きする猫種であるということは、シニア期が長いということでもあります。慢性腎臓病の最頻値年齢は9歳と11歳。「罹りにくい」を「ならない」と読み替えないでください。

受診の目安
次のいずれかがあれば、様子を見ずに受診してください。
| 状態 | 緊急度 |
|---|---|
| 口を開けて呼吸している、呼吸が速く苦しそう | すぐに受診 |
| 後ろ足を突然引きずる、立てない、足先が冷たい | すぐに受診 |
| トイレに行くのに尿が出ない(特にオス) | すぐに受診 |
| ひもや糸を飲み込んだ可能性がある | すぐに受診 |
| 24時間以上まったく食べない | すぐに受診 |
| 安静時の呼吸数が繰り返し30回を超える | 当日中に受診 |
| 繰り返し吐く、下痢が2日以上続く | 当日中に受診 |
| 尿に血が混じる、排尿時に鳴く | 当日中に受診 |
| 皮膚をかき続ける、脱毛が広がってきた | 数日以内に受診 |
| 体重が徐々に減っている | 早めに受診 |
後ろ足の麻痺は、心臓の病気と関係することがあります。米国獣医内科学会の合意声明は、動脈血栓塞栓症による不全麻痺または麻痺を、よく見られる症状のひとつとして挙げています。心臓にできた血の塊が流れていき、後ろ足へ向かう血管を詰まらせるもので、強い痛みを伴います。
前の項のとおり、ラグドールは足のトラブルでの受診がもともと少ない猫種です。だからこそ、突然の後肢の異常を足の問題として様子見にしないでください。 足先が冷たい、肉球の色が悪い、鳴いて痛がるといった様子があれば、その場で動物病院に連絡してください。時間との勝負になる状態です。

予防医療と健康診断
ワクチン・寄生虫予防
完全室内飼育でも、人が外から持ち込む病原体があります。統計で疥癬と耳疥癬がオッズ比の1位・2位に入っている点からも、室内だから予防は不要とは言えません。猫伝染性鼻気管炎はワクチンの対象に含まれます。接種や予防の内容は生活環境で変わるため、かかりつけの獣医師と決めてください。
健康診断の頻度の目安
| 年齢 | 頻度 |
|---|---|
| 〜6歳 | 年1回 |
| 7歳〜 | 年1〜2回(血液検査を含める) |
心臓の検査は、別に頼む必要があります
米国獣医内科学会の合意声明は、変異を持たないラグドールについても定期的な心エコー検査を検討すべきだと述べています。一方で、一般的な健康診断のセットに心臓の超音波検査が含まれていないことは珍しくありません。
健康診断の内容を相談するとき、この猫種であることを伝えてください。 「ラグドールなので心臓を診てほしい」と言えば話が早くなります。合意声明が聴診の限界に触れている以上、「心音に異常なし」で終わらせない検査を選ぶ意味があります。
迎えるときに確認したいこと
これから迎える場合、遺伝子検査の結果は事前に確認できる情報です。
- 両親それぞれの検査結果(N/N、N/HCMrd、HCMrd/HCMrd のどれか)を見せてもらう
- 検査を実施した機関名を確認する
- 「検査済み」という言葉だけで済ませず、結果そのものを確認する
カリフォルニア大学デービス校は、変異を1つ持つ猫どうしの交配では25%の確率でリスクの高い子猫が生まれると説明しています。両親がともにN/Nであれば、子はこの変異を受け継ぎません。
すでに成猫を迎えている場合も、検査を受けることはできます。米国獣医内科学会の合意声明は、繁殖に使わないラグドールでも、発症する相対的なリスクを知るために遺伝子検査を検討できると述べています。結果は、心臓の検査をどの頻度で受けるかの判断材料になります。
なお、迎えた直後の時期は、統計で上位に入る傷病の最頻値年齢と重なります。耳の中と皮膚の状態、便の様子、食欲。この3つは、迎えて最初の数週間だけでも毎日見てください。

年齢で変わる注意点
この猫種は、年齢によって注意の向け先がはっきり変わります。
0歳(迎えた直後)
統計で上位に入る傷病の多くが、最頻値年齢0歳です。疥癬・耳疥癬、猫伝染性鼻気管炎、誤飲、猫伝染性腹膜炎。環境が変わる時期でもあるため、便と食欲の変化を毎日見てください。誤飲の原因になるものの片付けは、迎える前に済ませておきます。
1〜2歳
変異を2つ持つ個体で、心筋症の重い症状が出やすい時期です。日本のデータでも心筋症の最頻値年齢は2歳。体はまだ成長の途中で、「若いから元気なはず」という思い込みがもっとも効きにくい時期でもあります。呼吸数の記録を習慣にしておく価値があるのは、ここです。
〜4歳
体重が増え続けることが正常な期間です。数字だけで肥満を判断できません。触って確かめる習慣を、この間に身につけておきます。避妊・去勢手術のあとは必要カロリーが下がるため、手術前と同じ量を与え続けると増えていきます。フードの量の見直しは、そのタイミングで獣医師に相談してください。
4歳以降
体の成長は終わります。ここから先の体重の増加は、成長ではありません。体重計の数字が、そのまま使える指標に変わります。 これまで記録してきたグラフが、ここで初めて意味を持ちます。
7歳以降
血液検査を含む健康診断を年1〜2回に。慢性腎臓病の最頻値年齢は9歳と11歳です。この猫種では請求割合が低いとはいえ、平均寿命15.1歳という数字は、シニア期が長いことを意味します。高い場所に登らなくなったら、段差を減らすなど環境側の調整も検討してください。

よくある質問
Q. ラグドールは心筋症になりやすい猫種ですか?
「原因となる固有の遺伝子変異が特定されている猫種」というのが正確な表現です。日本の保険統計では請求割合は猫全体より低いものの、心筋症は無症状で進むことが多く、実態より低く出る可能性があります。頻度は高くないが発症する個体は若く重い、と理解してください。
Q. ブリーダーの「検査済み・陰性」は、どこまで信頼できますか?
その猫がR820Wという変異を持たないことの証明にはなります。しかし米国獣医内科学会の合意声明は、この変異が陰性のラグドールでも心筋症が報告されており、変異を持たない個体でも定期的な心エコー検査を検討すべきだと述べています。陰性は、発症しないことの保証ではありません。
Q. すでに成猫で迎えました。遺伝子検査は受けたほうがよいですか?
同じ合意声明は、繁殖に使わないラグドールでも相対的なリスクを知るために検査を検討できるとしています。結果は、心臓の検査をどの頻度で受けるかの判断材料になります。
Q. 体重が増え続けていますが、太っているのでしょうか?
CFAは、体の大きさと体重が完成するのは4歳だと記しています。4歳までは増えることが正常です。数字ではなく、背中や肋骨に触れて骨の感触が分かるか、上から見て腰にくびれがあるかで判断してください。
Q. 手入れが楽な被毛だと聞きました。ブラッシングは不要ですか?
CFAは「スチールコームで週1〜2回とかせばよく、時間の負担は最小限」と書いています。不要とは書かれていません。日本の統計では皮膚のトラブルが上位です。コーミングは、毛を整えると同時に皮膚を確認する機会だと考えてください。
まとめ
- CFAは、ラグドールで見つかっている遺伝性疾患は肥大型心筋症の1つだと記している
- 一方、アニコムの日本のデータでは、心筋症は「罹りにくい疾患」の第5位(請求割合0.9%、猫全体1.2%)
- ただし心筋症は無症状で進み、聴診でも分からないことがあるため、請求ベースの数字は実態より低く出る可能性がある
- 原因はR820Wという固有の変異。変異を2つ持つ個体は生後1〜2歳で重い症状が出やすく、日本のデータでも最頻値年齢は2歳
- 遺伝子検査が陰性でも心筋症は報告されている。「陰性=発症しない」ではない
- 遊びを要求しない気質のため行動の変化では気づけない。安静時の呼吸数を1分あたり30回未満の目安で記録する
- 体重が完成するのは4歳。それまでは「増えた=太った」が使えないので、触って確かめる
- 実際に多いのは消化器(11.3%)と膀胱炎(6.2%)と皮膚。心臓ばかり見ないこと
ラグドールの健康管理は、心臓の心配だけで終わらせないことが要点です。呼吸数を数える、体に触れる、お腹の調子を記録する。 この3つが、この猫種でもっとも効きます。
体調や行動で気になることがあれば、かかりつけの獣医師に相談してください。



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