ブリティッシュショートヘアがかかりやすい病気|耳と目に集中する理由

ブリティッシュショートヘアがかかりやすい病気|耳と目に集中する理由 ブリティッシュショートヘア

ブリティッシュショートヘアの健康を調べると、多発性嚢胞腎という腎臓の病気の名前がよく出てきます。ペルシャ系の血が入っている猫種なので、腎臓に注意という話につながりやすいのだと思います。

ところが猫種団体CFAは、この猫種についてはっきりこう書いています。「ブリティッシュショートヘアには、懸念すべき猫種固有の健康問題はない」。

そして日本のペット保険のデータでも、慢性腎臓病はむしろ猫全体より少ないという結果でした。アニコム損保が11,646頭を集計した統計で、慢性腎臓病は「他猫種に比べ罹りにくい疾患」の第1位に入っています。

では、この猫種で実際に多いのは何なのか。上位15項目を並べたところ、9項目が耳と目に集中していました。 そしてそれは、CFAが手入れの項目で名指ししている場所と一致していました。

⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。運営者は獣医師ではありません。記事の内容は診断や治療の代わりにはなりません。愛猫の体調で気になることがあれば、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。

床に座っているブリティッシュショートヘアの成猫の全身

「固有の健康問題はない」とCFAは書いている

まずCFAの記述です。

ブリティッシュショートヘアには懸念すべき猫種固有の健康問題はなく、その多様な遺伝的背景が、何世代にもわたってこの猫種の強さと活力を保つのに役立ってきた

【出典:The Cat Fanciers’ Association「British Shorthair」】

日本のデータも、この記述と矛盾しません。アニコム損保の家庭どうぶつ白書2025が、ブリティッシュショートヘア11,646頭(0〜12歳)について「他猫種に比べ罹りにくい疾患」として挙げているのは次の3つです。

傷病名ブリティッシュ猫全体オッズ比最頻値年齢
慢性腎臓病(腎不全含む)1.2%2.0%0.597歳
その他の泌尿器疾患2.5%3.2%0.776歳
歯周病/歯肉炎1.1%1.4%0.770歳

【出典:アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書2025」第2部第2章 品種別の統計(2-2-111)】

腎臓の病気は、猫全体の6割ほどの請求割合にとどまっています。 「ペルシャ系だから腎臓に注意」という一般論を、この猫種にそのまま当てはめることはできません。

ただし「罹りにくい」は「ならない」ではありません。年間診療費は平均129,348円と高く、最頻値年齢は7歳です。シニア期に入ったら血液検査を含む健康診断で見ておく対象であることは変わりません。

上位15項目のうち、9項目が耳と目だった

同じ統計の「他猫種に比べ罹りやすい疾患」上位15項目です。耳と目に印を付けてあります。

順位傷病名ブリティッシュ猫全体オッズ比
1細菌性外耳炎 👂1.0%0.5%2.09
2爪の外傷0.6%0.3%1.91
3耳の痒み(原因未定)👂0.6%0.3%1.87
4猫伝染性腹膜炎0.9%0.5%1.84
5潰瘍性角膜炎 👁1.0%0.6%1.80
6外耳炎(原因未定)👂2.5%1.6%1.65
7その他の呼吸器疾患1.0%0.6%1.65
8その他の眼科疾患 👁1.1%0.7%1.60
9その他の角膜炎 👁0.6%0.4%1.52
10鼻炎/副鼻腔炎/上部気道炎1.8%1.3%1.48
11膀胱結石1.3%0.9%1.45
12流涙症(涙やけ含む)👁0.7%0.5%1.41
13気管炎/気管支炎0.6%0.4%1.40
14結膜炎 👁5.6%4.2%1.36
15眼瞼炎 👁0.6%0.4%1.36

【出典:アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書2025」第2部第2章 品種別の統計(2-2-110)】

耳が3項目、目が6項目。合わせて9項目です。 しかもオッズ比の1位は細菌性外耳炎、請求割合がもっとも高いのは結膜炎の5.6%でした。

耳の中を確認されているブリティッシュショートヘアの顔のアップ

CFAの手入れの指示は、一般論ではなかった

ここで、もう一度CFAを読んでください。この猫種の手入れについて、こう書かれています。

週に一度さっと櫛やブラシを通せば、抜け毛を抑えるのに十分である。加えて、定期的な爪切りと、ときどき耳を掃除すること

猫種の紹介ページで「爪切り」と「耳の掃除」を具体的に挙げるのは、よくある書き方ではありません。そして日本のデータでは、爪の外傷がオッズ比1.91で2位、耳の疾患が3項目入っています。

CFAが挙げた2つの手入れが、そのまま請求データの上位に対応しています。この猫種の健康管理は、病気の知識より手入れの習慣の話だと考えたほうが実態に近いといえます。

爪を切られているブリティッシュショートヘアの前足のアップ

耳|オッズ比の1位から3項目

細菌性外耳炎(2.09)、耳の痒み(1.87)、外耳炎(1.65)。最頻値年齢はいずれも0歳です。

気づきたいサイン

  • 耳を後ろ足でかく回数が増えた
  • 頭を振る、頭を傾ける
  • 耳の中に黒っぽい、または黄色っぽい汚れがたまる
  • 耳を触られるのを嫌がるようになった
  • 耳のあたりからにおいがする

家庭でできること

週1回、耳の中を見る習慣をつけてください。掃除ではなく、まず見るだけで構いません。 汚れの色と量が前回と違えば、それが受診の合図になります。

⚠️ 綿棒で耳の奥を掃除しないでください。汚れを押し込んだり、耳の中を傷つけたりすることがあります。汚れがたまっているときは、掃除の方法を含めて動物病院で相談してください。

原因が細菌なのかダニなのかで対処が変わります。市販の洗浄液で様子を見続けると、原因が分からないまま長引くことがあります。

目|請求割合がもっとも高いのは結膜炎

目の6項目のうち、結膜炎は請求割合5.6%と、この表全体で最多です。潰瘍性角膜炎はオッズ比1.80で、年間診療費の平均が23,777円と目の項目では高めでした。

気づきたいサイン

  • 目やにの量が増えた、色が変わった
  • 目をしょぼしょぼさせる、まぶしそうにする
  • 前足で目をこする
  • 白目が赤い、まぶたが腫れている
  • 涙が多い、目の下の毛が茶色く変色している(流涙症)

⚠️ 目を閉じたまま開けない、急に目をこすり続けるといった様子は、角膜に傷がついている可能性があります。 悪化が早いので、その日のうちに受診してください。

家庭でできること

毎日、顔を見るときに目の状態を確認してください。左右で目やにの量が違う、片方だけしょぼしょぼしている、といった左右差が手がかりになります。

目やには、濡らしたコットンで目頭から外側へ、そっと拭き取ります。乾いたティッシュでこすらないでください。

正面を向いたブリティッシュショートヘアの目のアップ

抱っこを好まない猫種で、毎日そこを見るには

ここが、この猫種の実務的な難しさです。CFAは、この猫種の扱われ方についてこう書いています。

この猫たちは抱えて連れ回されるのを好まないということを、子どもたちに伝えておくのが賢明である

耳と目は、毎日見たい場所です。しかし押さえつけて覗き込むのは、この猫種がもっとも嫌がるやり方でもあります。見なければならない場所と、触られたくない気質が重なっています。

現実的な進め方は、抱き上げないことです。

  • 猫が床で休んでいるときに、横から顔を見る
  • 耳は、頭をなでるついでに指で軽く倒して中を見る
  • 目は、正面から覗き込まず、斜め上から見る
  • 1回数秒で終える。じっくり見ようとしない

毎日数秒を続けるほうが、週に一度しっかり押さえて確認するより結果的によく見えます。嫌がられないやり方でないと、続かないからです。

血液型|この猫種の固有事情は、病気ではなく血液型

CFAは「固有の健康問題はない」と書いた直後に、健康に関わる注意をひとつだけ挙げています。それが血液型です。

**多くのブリティッシュショートヘアの系統はB型を持っている。**2つの型を組み合わせるには繁殖者側の特別な配慮が必要であり、十分な指導を受けるべきである

英国のラングフォード獣医検査室は、猫の血液型についてこう説明しています。

猫にはひとつの血液型システムがあり、A型、B型、そしてより稀なAB型の3つの型がある

b対立遺伝子の保有率が高い(最大60%)猫種は、エキゾチック、ブリティッシュショートヘア、コーニッシュレックス、デボンレックスである

【出典:Langford Vets「Feline Blood Type」】

なぜ知っておく意味があるのか

理由は2つあります。

1つ目は輸血です。 同検査室は「猫同士の輸血はすべて血液型を合わせる必要があり、そうでなければ致命的な輸血反応が起こりうる」としています。事故や手術で輸血が必要になったとき、血液型が分かっているかどうかで動きが変わります。

2つ目は繁殖です。 B型の母猫はA型の血液に対する抗体を高い濃度で持っています。A型やAB型の子猫がその初乳を飲むと、赤血球が壊されて重い貧血を起こします。新生児溶血と呼ばれる状態です。

ここで、よくある誤解についても同検査室が触れています。

新生児溶血は、B型の母猫の第1腹目の子猫にも起こりうる

「1回目の出産は大丈夫」という理解は正しくありません。

繁殖の予定がない家庭にとって直接関わるのは1つ目です。健康診断のときに血液型を調べておけるか、かかりつけの動物病院に聞いてみてください。 緊急時に慌てずに済みます。

動物病院で診察を受けているブリティッシュショートヘアの全身

この猫種にしか確認されていない遺伝性疾患

CFAは「固有の健康問題はない」としていますが、英国のラングフォード獣医検査室は、この猫種でのみ確認されている遺伝性疾患の検査を提供しています。自己免疫性リンパ増殖症候群です。

この病気は「FASL」と呼ばれる遺伝子の変異によるもので、常染色体劣性として遺伝する。つまり発症には変異遺伝子が2コピー必要である

生後6〜8週という早い時期に現れる。 症状は腹部の膨満、貧血、元気消失、体重減少で、リンパ節と脾臓に免疫細胞が蓄積して著しく腫れる

発症した子猫は、症状が現れてから短期間(4週間)のうちに死亡するか、安楽死となる

【出典:Langford Vets「British Shorthair Autoimmune Lymphoproliferative Syndrome (ALPS)」】

重い病気ですが、同検査室は「この病気は一般的ではない」とも明記しています。 また発症が生後6〜8週なので、子猫を迎える一般的な時期より前にあたります。飼い主が家庭で直面する可能性は高くありません。

意味があるのは、迎える前の確認です。同検査室は、この病気がオーストラリアまたはニュージーランドのブリティッシュショートヘアに由来すると考えられているとしており、輸入された個体とその子孫でリスクが高いと説明しています。血統に輸入個体が含まれるなら、検査の有無を確認する材料になります。

CFAの「固有の健康問題はない」という記述と食い違うように見えますが、どちらも正しいと考えてください。存在するが、頻度は高くない。この記事では両方をそのまま示します。

そのほか、データで目立った2つ

猫伝染性腹膜炎

オッズ比1.84で4位。請求割合は0.9%(猫全体0.5%)とそれほど高くありませんが、年間診療費が平均221,783円・中央値91,960円と、この表のなかで突出しています。最頻値年齢は0歳です。若い時期に起こりうること、費用の桁が違うことは、迎える前に知っておいてよい情報です。

膀胱結石

オッズ比1.45で11位。年間診療費は平均86,303円、最頻値年齢は3歳です。泌尿器疾患は全体としては「罹りにくい」側に入っているのに、結石だけが「罹りやすい」側に出ています。

トイレに行く回数が増えたのに尿が少ない、排尿時に鳴く、尿に血が混じるといった変化に注意してください。水を飲む機会を増やす工夫が基本になります。

⚠️ オス猫で「トイレに行くのに尿が出ない」状態は緊急です。 尿道が詰まると短時間で全身の状態が悪化します。その日のうちに受診してください。

平均寿命は14.2歳

同じ白書の2023年度データでは、ブリティッシュショートヘアの平均寿命は14.2歳です。掲載されている20猫種の中では中位より上にあたります。アニコム損保の契約データから作成したカレント生命表による、0歳時点の平均余命です。

慢性腎臓病の最頻値年齢が7歳であることとあわせると、7歳を過ぎてからの期間が長い猫種だといえます。シニア期の健康診断を省かないでください。

受診の目安

次のいずれかがあれば、様子を見ずに受診してください。

状態緊急度
目を閉じたまま開けない、目をこすり続けるすぐに受診
トイレに行くのに尿が出ない(特にオス)すぐに受診
口を開けて呼吸している、呼吸が速く苦しそうすぐに受診
24時間以上まったく食べないすぐに受診
白目が赤い、まぶたが腫れている当日中に受診
頭を振る、耳を強くかき続ける当日中に受診
尿に血が混じる、排尿時に鳴く当日中に受診
目やにの量や色が急に変わった数日以内に受診
耳の汚れが増えた、においがする数日以内に受診
体重が徐々に減っている早めに受診

予防医療と健康診断

ワクチン・寄生虫予防
完全室内飼育でも、人が外から持ち込む病原体があります。接種や予防の内容は生活環境で変わるため、かかりつけの獣医師と決めてください。

健康診断の頻度の目安

年齢頻度
〜6歳年1回
7歳〜年1〜2回(血液検査を含める)

あわせて相談したいこと

この猫種では、健康診断のときに次の2つを聞いておく価値があります。耳と目の見方と、血液型を調べておけるかです。どちらも普段の診察のついでに確認できることで、緊急時や日々の観察に効いてきます。

キャットタワーの低い段でくつろぐブリティッシュショートヘアの全身

年齢で変わる注意点

0歳(迎えた直後)
統計で上位に入る耳と目の項目は、最頻値年齢がほぼ0歳です。迎えて最初の数か月は、耳の中と目の状態を毎日見てください。猫伝染性腹膜炎の最頻値年齢も0歳です。食欲と便の変化にも注意します。

〜3歳
CFAは「成熟が遅く、完全に大きくなるまでおよそ3年かかる。オスは17ポンドほどになることがある」と記しています。体重が増え続けることが正常な期間なので、数字だけで肥満を判断できません。触って肋骨の感触を確かめる習慣をつけてください。

3歳前後
膀胱結石の最頻値年齢が3歳です。トイレの様子を見る習慣を、この時期に作っておくと変化に気づけます。

7歳以降
慢性腎臓病の最頻値年齢が7歳です。この猫種では請求割合が低いとはいえ、起きたときの費用は平均129,348円と高くなります。血液検査を含む健康診断を年1〜2回に切り替えてください。

窓辺で丸くなっているブリティッシュショートヘアの子猫の全身

よくある質問

Q. ブリティッシュショートヘアは腎臓の病気に注意すべき猫種ですか?
日本の保険統計では、慢性腎臓病は「他猫種に比べ罹りにくい疾患」の第1位でした(請求割合1.2%、猫全体2.0%)。CFAも固有の健康問題はないとしています。ただし最頻値年齢は7歳で、起きたときの費用は高額です。「特に注意すべき猫種ではないが、シニア期に普通に警戒する対象」と考えてください。

Q. どうして耳と目が多いのですか?
白書は理由を説明していないため、この記事でも断定はしません。分かっているのは、上位15項目のうち9項目が耳と目だったという事実と、CFAが手入れの項目で爪切りと耳の掃除を名指ししているという事実です。この2つが対応している以上、日々の手入れを軽く見ないことに意味があります。

Q. 耳掃除は自分でやってよいですか?
まずは「見るだけ」から始めてください。綿棒で奥を掃除すると、汚れを押し込んだり傷つけたりすることがあります。汚れがたまっているなら、原因が細菌かダニかで対処が変わるため、動物病院で方法を教わるのが確実です。

Q. 血液型は調べたほうがよいですか?
繁殖の予定がなくても、輸血が必要になったときに役立ちます。この猫種はB型の保有率が高い(最大60%)とされ、型が合わない輸血は致命的になりうると説明されています。健康診断のときにかかりつけの動物病院で相談してみてください。

Q. 抱っこを嫌がるので、耳や目を確認できません。
抱き上げないやり方に切り替えてください。床で休んでいるときに横から数秒見る、なでるついでに耳を軽く倒して覗く、といった方法です。CFAも「抱えて連れ回されるのを好まない」と記しています。嫌がらせないほうが、結果的に長く続きます。

まとめ

  • CFAは「この猫種に固有の健康問題はない」と明記している
  • 日本のデータでも、慢性腎臓病は「罹りにくい疾患」の第1位(1.2%/猫全体2.0%)。「ペルシャ系だから腎臓」は当てはまらない
  • 一方で「罹りやすい疾患」上位15項目のうち、9項目が耳と目だった
  • 耳3項目(1位の細菌性外耳炎はオッズ比2.09)、目6項目(結膜炎は請求割合5.6%で最多)
  • CFAが手入れで名指ししている「爪切り」と「耳の掃除」が、そのままデータの上位に対応している
  • この猫種の固有事情は病気ではなく血液型。B型の保有率が高く(最大60%)、型の合わない輸血は致命的になりうる
  • この猫種にしか確認されていない遺伝性疾患もあるが、一般的ではなく、発症は生後6〜8週
  • CFAは「抱えられるのを好まない」とも書いている。毎日見たい場所と、触られたくない気質が重なる猫種
  • 平均寿命14.2歳。慢性腎臓病の最頻値年齢は7歳

この猫種の健康管理は、めずらしい病気を覚えることではありません。耳の中を見る、目やにを見る、爪を切る。 週に一度の手入れが、そのまま統計の上位に効いてきます。

体調や行動で気になることがあれば、かかりつけの獣医師に相談してください。

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