マルチーズのしつけ方|吠え・留守番・トイレの悩み対策

マルチーズのしつけ方 しつけ

マルチーズは、家族のそばで過ごすことを好み、人の声や動きをよく見ている犬種です。名前を呼ぶとすぐに反応し、生活のルールも覚えやすい一方、抱っこしてほしいと吠える、飼い主が離れると落ち着かない、目元や足先のお手入れを嫌がるといった悩みが出ることがあります。

小さくて軽いため、吠えたら抱き上げる、歩かなければ運ぶ、嫌がる手入れは押さえて短時間で済ませるという対応になりがちです。しかし、それを繰り返すと、吠えれば要求が通る、自分では移動しなくてよい、人の手が近づくと拘束されるという学習につながります。

マルチーズのしつけでは、甘えさせないことが目的ではありません。安心して人を頼れる関係を保ちながら、抱っこされていなくても休む、静かに待ってから要求を伝える、自分の足で移動する、体に触れられることへ少しずつ慣れるという力を育てることが重要です。

この記事では、吠え、留守番、トイレ、甘噛み、散歩、飛びつき、ブラッシング、目元のケア、歯みがきなど、マルチーズと暮らす中で起こりやすい悩みへの対応を解説します。

注意:本記事は一般的な情報提供を目的としています。行動が急に変わった、目を細める、涙や目やにが急に増えた、咳が続く、呼吸が苦しそう、足を上げる、触ると怒る場合は、しつけの問題と決めつけず獣医師へご相談ください。

室内で飼い主の合図に注目する白いマルチーズ

マルチーズのしつけで知っておきたい気質

ジャパンケネルクラブ(JKC)は、マルチーズの用途を「コンパニオン&トイ」とし、性格を活発で、愛情深く、非常に穏やかで、大変知的と説明しています。【出典:ジャパンケネルクラブ「マルチーズ」】

この気質は、家庭でのしつけにも表れます。

① 人との関わりが強い報酬になる
おやつだけでなく、声をかけられる、なでられる、膝へ乗るといったことも報酬になります。吠えた直後に抱くと、吠える行動が続きやすくなる点に注意が必要です。

② 穏やかでも、活動は必要
室内で静かに過ごす印象がありますが、散歩、遊び、におい探し、短いトレーニングは必要です。活動不足は、要求吠えや落ち着きのなさにつながる場合があります。

③ 人の反応をよく学ぶ
名前への反応やトイレを覚えやすい一方、食卓のそばで待てば食べ物がもらえる、前足をかければ抱かれるという流れも学習します。家族の対応をそろえることが重要です。

④ 繊細さには距離と選択肢で対応する
知らない人、犬、大きな音、手入れ道具を警戒する個体もいます。怖がる犬を近づけて我慢させるのではなく、落ち着ける距離へ戻し、自分から見たり近づいたりできたことをほめます。

犬種には傾向があっても、性格は一頭ずつ異なります。マルチーズの歴史や性格全体は、マルチーズの性格と特徴で詳しく解説しています。

しつけで大切な5つの基本方針

① 禁止より、代わりの行動を教える

「吠えない」「飛びつかない」と止めるだけでは、犬は次に何をすればよいか分かりません。

  • 抱っこを求めて吠える代わりに、四つ足で待つ
  • 来客へ走る代わりに、マットへ移動する
  • 手を噛む代わりに、おもちゃを噛む
  • 食卓へ前足をかける代わりに、ベッドで休む

してほしい行動を具体的に決め、その行動へ報酬を与えます。

② 成功した瞬間にほめる

犬が静かになった、飼い主を見た、四つ足を床につけたという瞬間に、短いほめ言葉と報酬を与えます。時間がたってからでは、どの行動が評価されたのか伝わりにくくなります。

PDSAも、望ましい行動の最中か直後に報酬を与え、犬が行動と結果を結びつけやすくするよう案内しています。【出典:PDSA「Reward-based training for dogs」】

③ 抱っこを管理手段だけにしない

危険を避けるために抱くことは必要です。ただし、犬が吠えた、歩かない、ほかの犬を見たというたびに抱くと、自分の足で状況を切り替える経験が減ります。

安全な場所では、対象から距離を取り、飼い主を見る、自分で一歩移動する、四つ足で落ち着く行動をほめます。抱っこには合図を付け、犬が予測できるようにします。

④ 失敗しにくい環境を作る

窓の外へ吠えるなら視界を調整する、トイレまで遠いなら近くへ増設する、食卓へ近づくならベッドの位置を変える。望ましくない行動を繰り返す前に環境を整えます。

⑤ 練習は短く、家族で統一する

1回数分の練習を生活の中で繰り返します。使う合図、抱っこする条件、要求吠えへの対応、食卓から与えないルールを家族で共有してください。

子犬期は社会化と体に触れる練習を優先する

環境省の資料では、生後3〜16週ごろを社会化期とし、人、ほかの動物、環境、音などへ適切に慣らすことを、おすわりやふせより重要な課題として説明しています。【出典:環境省「動物の適正譲渡における飼い主教育」】

慣らしておきたいもの

  • 人:家族以外の大人、子ども、帽子やマスクを着けた人
  • 音:インターホン、掃除機、ドライヤー、車、工事音
  • 場所:動物病院、トリミングサロン、車、エレベーター、散歩道
  • 犬:健康状態が確認でき、穏やかに接する相手
  • お手入れ:目元、口元、耳、足先、爪、ブラシ、歯ブラシ

抱っこで外を見る経験も役立ちますが、それだけで社会化が完了するわけではありません。安全が確認できる場所では、自分の足で地面を歩く、においを嗅ぐ、人が近くを通る経験も作ります。

体が固まる、しっぽを下げる、逃げようとする、おやつを食べられない場合は刺激が強すぎます。距離を取り、観察できる程度から始めます。ワクチン完了前の外出方法や犬との接触範囲は、かかりつけの獣医師へ確認してください。

安全な場所で人や生活音を経験するマルチーズの子犬

吠え対策は、要求・警戒・不安を分ける

吠えたときは、直前の状況と、吠えたあとに起きたことを記録します。抱っこ要求、来客への警戒、留守番の不安では対応が異なります。

抱っこや注目を求める要求吠え

吠えている最中に抱き上げたり、なだめるために声をかけ続けたりすると、吠えると人が反応すると学ぶ場合があります。

  1. 排泄、水、暑さ、痛みなど必要な世話がないか確認する
  2. 必要が満たされているなら、吠えている最中に要求をかなえない
  3. 一瞬静かになり、四つ足が床についたらほめる
  4. 「おすわり」など簡単な行動を促してから抱っこや遊びに応じる

完全に無視することだけが対策ではありません。犬が何をすれば要求を伝えられるのか、代わりの方法を教える必要があります。

インターホンや来客への警戒吠え

まず、窓から見える範囲を減らす、インターホンの音量を下げる、玄関との間にゲートを置くなど、刺激を管理します。

普段からマットへ行く練習を行い、小さな録音音を聞かせます。犬が音に気づいたあと、飼い主を見た、マットへ移動した瞬間に報酬を与えます。最初から本番と同じ音量や長い来客時間で練習しません。

RSPCAも、吠えの原因を確認し、窓から見える刺激を減らすことや、吠える前に別の行動へ切り替える方法を案内しています。【出典:RSPCA「How To Stop Your Dog Barking Too Much」】

インターホンのあと玄関から離れたマットで待つマルチーズ

留守番は「ひとりで休める時間」から作る

人との距離が近いマルチーズでは、長時間の留守番を突然始めるのではなく、飼い主が在宅しているときから少し離れて休む練習をします。

  1. 犬がベッドやマットへ乗ったら報酬を与える
  2. 飼い主が一歩離れ、犬が落ち着いているうちに戻る
  3. 室内のドアを一瞬閉めて戻る
  4. 数秒から始め、時間と距離を一度に増やさない
  5. 出発と帰宅を過度に興奮する行事にしない

知育玩具やフードを使う場合は、飼い主がいる状態で安全に使えることを確認し、誤飲しない大きさを選びます。使用分は1日の食事量に含めてください。

留守番中の様子は録画して確認します。吠え続ける、歩き回る、出入口を壊す、よだれ、震え、排泄が見られる場合は、時間を延ばして慣れさせようとしません。

RSPCAも、犬が不安を示さない範囲で留守番時間を少しずつ延ばし、不安が出たら前の段階へ戻すよう案内しています。【出典:RSPCA「How to Train Your Dog to Stay Home Alone」】

飼い主から少し離れたベッドで休むマルチーズ
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トイレトレーニングの進め方

体の小さな子犬は、トイレまでの距離が長いと間に合わないことがあります。迎えた直後は生活範囲を限定し、寝床から近く、落ち着いて排泄できる場所へトイレを置きます。

基本の手順

  1. 起床後、食後、遊んだ後、寝る前にトイレへ誘導する
  2. 床のにおいを嗅ぐ、回る、落ち着かなくなる様子を見逃さない
  3. 排泄できた直後に、その場でほめて報酬を与える
  4. 成功が続いてから行動範囲を少しずつ広げる
  5. 失敗は叱らず、においが残らないよう静かに片づける

失敗した場所へ連れて行って叱っても、犬は過去の排泄と叱責を結びつけられません。人に見られない場所で排泄するようになる場合があります。

RSPCAも、排泄直後に毎回ほめ、失敗を罰しない方法を推奨しています。【出典:RSPCA「How To Toilet Train Your Puppy or Dog」】

急に失敗が増えた、排尿姿勢を繰り返す、痛がる、飲水量が変わった場合は、しつけの後戻りと決めつけず受診してください。

生活スペース近くの犬用トイレへ入るマルチーズの子犬

甘噛み・飛びつき・抱っこのルール

甘噛みには噛んでよい物を用意する

子犬は遊びや探索、歯の生え変わりに伴って人の手や服を噛むことがあります。手でじゃらすと、手をおもちゃとして覚えやすくなります。

歯が当たったら動きを止め、遊びを短く中断します。落ち着いたら犬用のおもちゃへ誘導し、おもちゃを噛んだことをほめます。大声を出すと興奮が高まる犬もいるため、反応を大きくしません。

触ったときだけ噛む、顔まわりへ手を出すと唸る、皮膚を傷つけるほど噛む場合は、単純な甘噛みとして扱いません。目、歯、皮膚、関節などの痛みが隠れていないか獣医師へ相談します。

飛びつきではなく、四つ足で待つ

飛びついた犬を抱くと、飛びつきと抱っこが結びつきます。四つ足が床についているときに合図を出して抱き上げます。飛びついたら人はいったん動きを止め、落ち着いたらやり直します。

PDSAも、犬の四つ足が床へ戻った時点でほめ、報酬を与える方法を案内しています。【出典:PDSA「Basic training for puppies」】

抱き上げるときは毎回同じ言葉を使い、突然体が浮かないよう予告します。床へ降ろすときも、犬が飛び降りる高さから手を放しません。

ブラッシング・目元ケア・歯みがきに慣らす

マルチーズの長い白い被毛は、ブラッシングや顔まわりの確認が継続的に必要です。完成したお手入れを我慢させるのではなく、一つの動作を受け入れる練習として進めます。

ブラッシングは一部分、一回から

ブラシを見せて報酬、体へ軽く当てて報酬、一回動かして報酬という順番で進めます。毛玉を強く引っ張ると、ブラシだけでなく人の手も避けるようになる場合があります。

目元は「拭く前の練習」から

清潔な布やコットンを見せる、頬へ一瞬触れる、目の下を一方向へ短く拭くという段階に分けます。目の周囲を強くこすったり、嫌がる犬を顔ごと固定したりしません。

涙やけは、しつけや拭き取りだけで原因を解決できるものではありません。急に涙が増えた、片目だけ症状がある、目を細める、赤みや多量の目やにがある場合は受診してください。目、膝、気管などの注意点は、マルチーズがかかりやすい病気と健康管理でも解説しています。

歯みがきは口元へ触れるところから

最初から歯ブラシを奥まで入れず、口元へ触れる、唇を少しめくる、指やガーゼで歯の外側へ触れる、犬用歯ブラシへ進むという順番で慣らします。人用の歯みがき剤は使いません。

米国獣医師会(AVMA)は、動物病院での歯科処置の間に歯を健康に保つ方法として、定期的な歯みがきを最も効果的な家庭ケアと説明し、慣らすには忍耐とトレーニングが重要としています。【出典:AVMA「What can I do at home for my pet’s oral health?」】

口臭が強い、歯ぐきから出血する、口元を痛がる場合は、練習を続ける前に獣医師へ相談してください。

目元へ柔らかい布を短時間当てられるマルチーズ

散歩とハーネスの練習

マルチーズは小型でも、外を歩き、においを嗅ぎ、生活音へ慣れる時間が必要です。歩かないたびに抱くのではなく、疲れ、暑さ、寒さ、恐怖、体調を確認し、短い距離で成功できる散歩から始めます。

ハーネスは室内で慣らす

ハーネスを見たら報酬、鼻先を近づけたら報酬、短時間着けたら報酬という順番で進めます。足や頭を無理に通さず、体に合ったサイズを選びます。

気管虚脱がある犬について、米国獣医外科学会(ACVS)は、首につけるリードではなく、体を支えるハーネスを使用するよう案内しています。【出典:American College of Veterinary Surgeons「Tracheal Collapse」】

これは、ハーネスを着ければ気管虚脱を予防できるという意味ではありません。咳、ガーガーという呼吸音、息苦しさ、運動を嫌がる様子があれば、散歩練習を中止して受診します。

緩んだリードをほめる

室内で飼い主の近くにいることをほめ、一歩ずつ進みます。リードが緩んでいるときに報酬を与え、張ったら強く引き戻さず止まります。犬が戻ってリードが緩んだら再び進みます。

RSPCAも、緩んだリードで歩いている間に報酬を与え、リードが張る前に止まる方法を案内しています。【出典:RSPCA「Train Your Dog to Stop Pulling On The Lead」】

滑りと高い場所からの飛び降りを減らす

膝蓋骨脱臼は、周囲の筋骨格の異常な発達に関係する整形外科疾患で、家庭のしつけだけで予防できる病気ではありません。【出典:Merck Veterinary Manual「Patellar Luxation in Dogs and Cats」】

一方、滑る床や高い場所からの転落を減らす環境づくりはできます。床へマットを敷き、ソファでは抱き上げる合図を使い、飛び降りる前に人を待つ行動を教えます。急に足を上げる、スキップする、痛がる場合は運動を中止して受診してください。

体に合ったハーネスで緩んだリードのまま歩くマルチーズ

マルチーズのしつけで避けたいNG対応

吠えるたびに抱き上げる

安全確保が必要な場面を除き、吠えと抱っこが毎回続くと、要求吠えが維持される場合があります。静かな瞬間と四つ足で待つ行動をほめます。

留守番をいきなり長時間から始める

疲れれば寝るだろうと長く離れると、不安な状態を繰り返す場合があります。数秒から練習し、不安になる前に戻ります。

目元や毛玉を強くこする

痛みを伴うケアは、人の手や布、ブラシへの警戒につながります。汚れや毛玉の状態によっては、獣医師やトリマーへ相談します。

痛みや恐怖で従わせる

米国獣医行動学会(AVSAB)は、すべての犬のトレーニングで報酬を中心とした方法だけを使い、痛みや身体的・心理的な不快感に頼る方法を使わないよう勧告しています。【出典:AVSAB「Humane Dog Training Position Statement」】

チョークチェーン、電気刺激、強いリードショック、押さえ込み、大声による威圧は使いません。

年齢別に見るしつけのポイント

子犬期(〜6か月ごろ)
社会化、トイレ、甘噛み、ひとりで休む練習を優先します。ブラシ、目元の布、歯ブラシ、ハーネスは、一動作ずつ慣らします。

思春期(6か月〜1歳半ごろ)
要求や外の刺激への反応が強くなる場合があります。反抗と決めつけず、合図が届く距離と難易度へ戻します。家族の抱っこや食卓のルールも再確認します。

成犬期(1歳半〜7歳ごろ)
吠え、留守番、散歩のルールと、お手入れへの協力を維持します。抱っこだけで移動せず、無理のない範囲で自分の足を使う時間を作ります。

シニア期(7歳ごろ〜)
聞こえ方、見え方、排泄間隔、心臓や関節の状態に合わせて練習を調整します。急に怒る、夜に落ち着かない、トイレを失敗する、散歩を嫌がる場合は受診してください。

専門家へ相談したいサイン

  • 人や犬へ突進し、噛む危険がある
  • 目元、口元、足先へ触れると強く怒る
  • 留守番中の吠え、破壊、排泄、よだれが続く
  • 外へ出ると震え、食べ物も受け取れない
  • 咳、歩き方、涙、排泄など体調の変化を伴う
  • 練習を続けても悪化している
  • 行動が急に変わった

まず獣医師に相談し、痛みや病気の可能性を確認します。行動面の支援が必要な場合は、報酬を中心とした方法を使うトレーナーや、獣医行動診療に対応する専門家を選びます。

まとめ

マルチーズのしつけでは、人との距離の近さを大切にしながら、抱っこされていなくても落ち着ける行動を育てることが重要です。

  • 吠えは要求、警戒、不安に分けて対応する
  • 要求吠えには、四つ足で静かに待つ行動を教える
  • 留守番は、在宅中に少し離れて休む練習から始める
  • トイレは生活スペースの近くに置き、成功直後にほめる
  • 甘噛みには犬用のおもちゃを用意する
  • 抱っこと床へ降ろす動作には合図を付ける
  • 目元、被毛、歯のケアは一動作、数秒から慣らす
  • ハーネスは室内から慣らし、緩んだリードをほめる
  • 行動の急な変化や目、咳、歩き方の異常は受診を優先する

愛情深い犬に自立を教えることは、距離を置くことではありません。飼い主がそばにいない短い時間も安全だと伝え、要求を静かな行動で表せるようにする。その積み重ねが、人のそばを好むマルチーズとの生活を安定させます。

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