柴犬は、日本犬らしい丈夫さと活発さを持つ犬種として知られています。引き締まった体つき、警戒心と忠実さをあわせ持つ性格、そして里山で人とともに暮らしてきた歴史から、全体的に健康で頑丈な犬種という印象を持たれることが多い犬種です。
その一方で、柴犬には犬種としてかかりやすい傾向のある病気もあります。特に皮膚や目のトラブルは、柴犬と暮らすうえで早めに知っておきたいテーマです。「丈夫だから大丈夫」という印象だけで過ごしてしまうと、皮膚のかゆみ、目の異常、関節の負担、高齢期の変化などに気づくのが遅れ、症状が進んでから慌てることがあります。
さらに柴犬は、痛みや不調を表に出さず、我慢してしまう傾向があるともいわれます。だからこそ、飼い主が普段の様子をよく観察し、小さなサインに早く気づくことが、柴犬の健康を守るうえでとても大切になります。
この記事では、柴犬がかかりやすいとされる病気の特徴と原因、気づきたいサイン、検査や治療・予防の考え方、日常でできる健康管理、予防医療や健康診断、年齢別の注意点、よくある質問まで、一般的な情報をもとにわかりやすく解説します。
⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。具体的な診断や治療方針は、必ず動物病院(獣医師)にご相談ください。症状の現れ方や必要な対応は、個体や状況によって異なります。

柴犬の健康の特徴
柴犬は全体的に丈夫な犬種とされますが、体質的に皮膚のトラブルや目の病気が見られやすいといわれています。また、日本犬は高齢期に認知機能の低下(いわゆる認知症)が見られることがある点も、よく知られている特徴です。
柴犬の健康を守るうえで、特に意識したいのは次の3点です。
- 皮膚の状態を日常的にチェックする(かゆみ・赤み・脱毛・におい)
- 左右の目の様子を見比べる(充血・濁り・痛がる様子)
- 体重を適正に保ち、関節や全身の負担を減らす
柴犬は感情をあまり表に出さず、不調を隠す傾向があるともいわれます。「食欲はあるか」「歩き方はいつも通りか」「寝ている時間が極端に増えていないか」といった日々の観察が、早期発見の最大の手がかりになります。柴犬と長く健やかに暮らすためには、病気を完全に防ぐことよりも、「早く気づいて、早く相談する」習慣を持つことが現実的で効果的です。
かかりやすい病気① 皮膚の病気(アレルギー性皮膚炎・アトピー)
柴犬で特に多いとされるのが、皮膚のトラブルです。なかでもアレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎が代表的とされ、柴犬の健康相談で挙がりやすいテーマのひとつです。【出典:アニコム「みんなのどうぶつ病気大百科」】
主な原因
ハウスダスト、花粉、ノミ、食べ物などに対するアレルギー反応や、もともとの体質(皮膚のバリア機能の弱さ)が関わるとされています。季節の変わり目や、特定の時期に悪化することもあります。一度かゆみが起きると、掻くことで皮膚が傷つき、そこから細菌や酵母(マラセチア)が増えて二次的な炎症を起こし、さらにかゆくなる、という悪循環に陥りやすいのも皮膚トラブルの特徴です。
気づきたいサイン
- 体や足をしきりにかく、舐め続ける、噛む
- 皮膚の赤み、フケ、脱毛、ベタつき、黒ずみ
- 目の周り・口の周り・足先・脇・内股・お腹など、特定の部位に症状が出やすい
- 耳をかゆがる、頭を振る、耳のにおいが強くなる(外耳炎を併発することも)
- 同じ場所を執拗に気にする
検査・治療の一般的な考え方
動物病院では、皮膚の状態の確認や、原因(アレルゲンや感染)の見きわめが行われ、症状に応じてスキンケアや、かゆみ・炎症を抑える対応、生活環境や食事の見直しなどが組み合わされることがあります。アレルギーが背景にある場合は、「治す」よりも「上手に付き合ってコントロールする」という考え方が基本になります。
家庭でできる予防・ケア
定期的なブラッシングで皮膚と被毛の状態を確認し、清潔な環境を保つことが基本です。シャンプーの頻度や種類は体質によって合うものが異なるため、迷う場合は獣医師に相談しましょう。人間用のシャンプーや、刺激の強いケア用品の自己判断での使用は避けたほうが安心です。

かかりやすい病気② 目の病気(緑内障・白内障)
柴犬は、緑内障が見られやすい犬種のひとつとされています。緑内障は進行すると視力に関わり、強い痛みを伴うこともあるため、早期の発見がとても重要です。【出典:アニコム「みんなのどうぶつ病気大百科」】
気づきたいサイン
- 目を痛がる、しょぼしょぼさせる、まぶしそうにする
- 白目の充血、目が普段より大きく見える、目をこする
- 目の表面が青白く・白っぽく濁る
- ものにぶつかる、暗い場所を嫌がる、段差で立ち止まる
- 元気がなく、頭を触られるのを嫌がる
緑内障と白内障の違い(簡単に)
緑内障は、目の中の圧(眼圧)が高くなる状態で、強い痛みを伴い、急に進行することがあります。一方、白内障は水晶体が白く濁って見えにくくなる状態で、加齢に伴って見られることもあります。どちらも目が白っぽく見えることがあり、見た目だけでは区別が難しいため、自己判断は禁物です。
受診の考え方
目の異常は進行が早いこともあり、特に「急に強く痛がる」「急に目が濁った・充血した」といった場合は、できるだけ早い受診が大切です。視力に関わる病気は、早く気づいて対応を始めるほど選択肢が広がります。「いつもと目つきが違う」と感じたら、様子を見すぎず相談しましょう。
かかりやすい病気③ 膝蓋骨脱臼・関節のトラブル
柴犬を含む犬では、膝蓋骨(膝のお皿)が本来の位置から外れる膝蓋骨脱臼が見られることがあります。また、加齢とともに関節への負担が蓄積し、関節炎などにつながることもあります。
気づきたいサイン
- 歩いていて急に後ろ足を上げる、ケンケン・スキップのような歩き方をする
- 後ろ足を気にする、運動や立ち上がりを嫌がる
- 段差や階段、ジャンプを嫌がる
- 散歩の途中で座り込む、歩きたがらない
原因・予防・対応
膝蓋骨脱臼には生まれつきの要因が関わることもありますが、肥満や、滑りやすい床での生活が負担を大きくします。滑りにくいマットを敷く、体重を適正に保つ、急な段差やジャンプを減らす、といった配慮が予防につながります。歩き方の異常が続く場合や、痛がる様子がある場合は受診し、状態に応じた対応を相談しましょう。
かかりやすい病気④ 高齢期の認知症(認知機能の低下)
日本犬は、高齢期に認知症のような変化が見られることがあるとされています。早めに気づいてケアを始めることで、本人も家族も穏やかに過ごしやすくなります。
気づきたいサイン
- 夜鳴きが増える、昼夜が逆転する
- 同じ場所をぐるぐる回る、狭い所に入って動けなくなる
- 名前や呼びかけへの反応が鈍くなる
- トイレの失敗が増える、ぼんやりする時間が増える
- 飼い主への反応や甘え方が変わる
対応の考え方
これらの変化は、認知機能の低下だけでなく、痛み、目や耳の衰え、ほかの病気が背景にあることもあります。まずは他の病気が隠れていないかを含めて獣医師に相談することが大切です。そのうえで、生活リズムを整える、滑らない・ぶつかっても危なくない安全な環境をつくる、日中に適度な刺激(散歩や声かけ)を入れる、といった工夫が役立ちます。
かかりやすい病気⑤ 食物アレルギー
柴犬では、特定の食材に対する食物アレルギーが見られることもあります。皮膚のかゆみとして現れることもあれば、下痢や軟便、嘔吐など消化器の不調として現れることもあります。
フードを切り替えたときに症状が変わる場合などは、食物アレルギーの可能性も含めて獣医師に相談すると安心です。原因を見きわめるための食事管理(除去食など)は、自己流の極端な制限ではなく、栄養バランスを保ちながら獣医師の指導のもとで行うことが大切です。
そのほか気をつけたい不調(耳・歯・高齢期)
上記のほかにも、柴犬を含む犬では次のような不調が見られることがあります。
- 外耳炎:耳をかゆがる、頭を振る、においや汚れ。皮膚トラブルと関連することも
- 歯周病:口のにおい、歯石、歯ぐきの赤み。小型〜中型犬で起こりやすく、放置すると全身の健康にも影響するとされる
- 高齢期の腫瘍(しこり)など:体を触ったときのしこり、急な体重変化、元気・食欲の低下
日常的に体を触る習慣があると、しこりや痛がる場所などの変化に早く気づけます。
こんな時はすぐに動物病院へ(受診の目安)
次のような様子が見られたら、できるだけ早めの受診をおすすめします。判断に迷うときは、電話で動物病院に相談すると安心です。
- 目を強く痛がる、急に目が濁った・充血した・大きく見える
- 突然、足を引きずる・立てない・強く痛がる
- 皮膚を掻き壊して出血している、急に広い範囲が赤くなった
- 下痢や嘔吐が続く、ぐったりして元気がない
- 食欲が急になくなった、水をあまり飲まない/急に飲む量が増えた
- 呼吸が荒い・苦しそう、ふらつく、けいれんがある
特に「いつもの様子と明らかに違う」と感じたときは、様子を見すぎないことが大切です。
予防医療と健康診断
病気の早期発見・予防のためには、日常のケアに加えて、定期的な予防医療と健康診断が欠かせません。
- ワクチン接種:感染症の予防。種類やスケジュールは獣医師と相談
- フィラリア予防・ノミダニ予防:季節や地域に応じた予防を継続
- 避妊・去勢:将来の病気予防やパートナーとしての健康管理の観点から検討(時期は獣医師に相談)
- 定期健康診断:年1回以上を基本に、シニア期は半年に1回を目安に。血液検査や尿検査などで、見た目では分かりにくい変化を早めに把握
健康診断は「異常を見つけるため」だけでなく、「その子の平常値を知っておくため」にも役立ちます。元気なうちのデータがあると、いざという時の比較がしやすくなります。
柴犬の健康を守る日常のポイント
- 皮膚ケア:定期的なブラッシングと清潔な環境、体質に合った食事
- 目の観察:左右の目を見比べ、充血・濁り・痛がる様子を早めに察知
- 体重管理:関節や全身の負担を減らす。おやつは総カロリーの一部として考える
- 適度な運動:活発な犬種なので、毎日の散歩や遊びで心と体を満たし、ストレスをためない
- デンタルケア:歯みがきの習慣づけで口の健康も守る
- 体を触る習慣:スキンシップを兼ねて、しこり・痛み・左右差をチェック
- 定期健診:年1回以上、シニア期は半年に1回を目安に

年齢別に気をつけたいこと
- 子犬期(〜1歳ごろ):ワクチンや初回の健康診断、社会化。皮膚や目の様子を観察する習慣をつける。急な段差・ジャンプを避け、関節への負担をかけない生活を意識
- 成犬期(1〜7歳ごろ):体重管理、皮膚トラブルの早期対応、定期健診。アレルギーの傾向を把握しておく。運動と食事のバランスを保つ
- シニア期(7歳ごろ〜):認知機能や関節の変化、目の病気、腫瘍などに注意。健診の頻度を上げ、段差対策・滑り対策など生活環境を見直す。変化に気づいたら早めに相談
よくある質問(FAQ)
Q. 柴犬は皮膚が弱いと聞きますが、予防できますか?
体質的な要因もあるため完全に防ぐのは難しいですが、清潔な環境、適切なスキンケア、体質に合った食事、こまめな観察によって、悪化や繰り返しを抑えやすくなります。かゆみが続く場合は早めに相談しましょう。
Q. 目が白っぽい気がします。年のせいでしょうか?
加齢による変化のこともありますが、緑内障や白内障など、治療や対応が必要な病気のこともあります。見た目だけでは区別が難しいため、自己判断せず、早めに動物病院で確認しましょう。
Q. 何歳から健康診断の頻度を上げるべきですか?
一般的に7歳前後からシニア期とされ、健診を半年に1回程度に増やすと安心とされます。犬種や体格、健康状態によって異なるため、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
Q. 柴犬は丈夫だから健康診断は必要ないのでは?
丈夫な犬種でも、病気が始まったばかりの段階は見た目では分かりにくいものです。健康なうちの数値を知っておくことが、将来の早期発見につながります。元気なときこそ受けておきたい習慣です。
Q. かゆがるのでシャンプーを増やしてもいいですか?
シャンプーのしすぎは、かえって皮膚の負担になることもあります。頻度や種類は体質によって合うものが異なるため、自己判断で増やす前に獣医師に相談するのが安心です。
まとめ
柴犬は丈夫な犬種ですが、皮膚・目・関節・高齢期の変化には気を配りたいところです。
- 柴犬は皮膚(アレルギー性皮膚炎・アトピー)のトラブルが多いとされる
- 緑内障など目の病気にも注意。急な濁りや痛みは早めの受診を
- 膝蓋骨脱臼など関節のトラブルが見られることがある
- 高齢期は認知機能の低下(認知症)が出ることがある
- 食物アレルギーが皮膚や消化器の不調として現れることもある
- 外耳炎・歯周病・高齢期の腫瘍など、その他の不調にも目を向けたい
- 皮膚ケア・体重管理・目の観察・予防医療・定期健診が予防の基本
柴犬は不調を我慢しやすいといわれます。日々の観察と定期的な健康診断で、小さな変化に早く気づくことが、長く健やかに暮らすコツです。気になるサインがあれば、自己判断せず、早めに獣医師へ相談しましょう。
柴犬の性格や特徴、しつけのコツについては別記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。


