フレンチブルドッグは、人と遊ぶことが好きで、家族の反応をよく見ています。明るく親しみやすい一方、楽しくなると興奮が高まり、飛びつく、リードを引っ張る、手や服を噛むといった行動につながることがあります。
こうした行動を「頑固だから」「言うことを聞かない犬種だから」と片づけても、しつけは進みません。
フレンチブルドッグのしつけで大切なのは、興奮してから抑え込むのではなく、興奮しすぎない環境を作り、落ち着いている瞬間をほめることです。
また、フレンチブルドッグは短頭種です。長時間の反復練習や暑い場所でのトレーニングは、呼吸や体温調節の負担になります。ほかの犬種以上に、短く区切って休ませる意識が必要です。
この記事では、フレンチブルドッグの気質と体の特徴に合ったしつけ方を、興奮、噛み癖、散歩、トイレ、留守番などの悩み別に解説します。
⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。急に触られることを嫌がるようになった、呼吸が苦しそう、唸る、本気で噛むといった様子がある場合は、しつけだけの問題と判断せず、獣医師や行動診療を扱う専門家にご相談ください。

フレンチブルドッグのしつけで知っておきたい気質
ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、フレンチブルドッグは「社交的」「活発」「遊び好き」「独占欲が強い」「鋭敏」なコンパニオン・ドッグとされています。【出典:ジャパンケネルクラブ「フレンチ・ブルドッグ」】
これらの特徴は、しつけにもそのまま表れます。
① 人と関わることが好き
飼い主の声、表情、動きをよく見ています。ほめる、遊ぶ、おやつを与えるといった報酬を使いやすく、関係を作りながら教えやすい犬種です。
② 楽しくなると興奮が高まりやすい
遊びや来客で気持ちが高ぶると、飛びつき、甘噛み、走り回る行動が続くことがあります。興奮の頂点で指示を出しても届きにくいため、早めに休憩へ切り替える必要があります。
③ 自分に注目を集める方法を覚えやすい
前足で催促する、吠える、おもちゃを押しつけるといった行動に毎回答えると、「この行動をすれば人が動く」と学習します。かわいさから要求を通し続けないことが大切です。
④ 体調や気温が集中力に影響する
短頭種は呼吸や体温調節に負担がかかりやすいため、動きが鈍いときに「反抗している」と決めつけてはいけません。室温、呼吸音、疲れ、痛みを先に確認します。
フレンチブルドッグの性格については、フレンチブルドッグの性格と特徴でも詳しく解説しています。

しつけで大切な5つの基本方針
① できた瞬間にほめる
犬は、行動の直後に起きたことを結びつけて学習します。「おすわりをした」「四つ足を床につけた」「静かに待てた」という瞬間に、短い言葉と小さなおやつでほめます。【出典:PDSA「Basic training for puppies」】
ほめ言葉は「いいこ」「そう」など、一つに決めておくと伝わりやすくなります。
② 望ましい行動を先に教える
「飛びつかない」「噛まない」と禁止するだけでは、犬は代わりに何をすればよいのか分かりません。
- 飛びつく代わりに、おすわりする
- 手を噛む代わりに、おもちゃを噛む
- 来客へ突進する代わりに、マットで待つ
- リードを引っ張る代わりに、飼い主の近くを歩く
やめてほしい行動とセットで、してほしい行動を具体的に教えます。
③ 1回数分の短い練習から始める
長く繰り返すより、成功したところで終えるほうが学習を続けやすくなります。特にフレンチブルドッグは、興奮や運動で呼吸が荒くなりやすい犬種です。
涼しく静かな室内で、1回数分の短い練習を1日に数回行います。パンティングが強くなる、呼吸音が大きくなる、伏せたまま動かないといった様子があれば、その日の練習は中止してください。PDSAも、犬が飽きないようトレーニングを短く保つよう案内しています。【出典:PDSA「Basic training for puppies」】
④ 家族全員でルールを統一する
飛びつきを止めたいのに、一人だけ抱き上げて喜ぶ。要求吠えを減らしたいのに、一人だけおやつを与える。この状態では、犬は「相手を選べば要求が通る」と学びます。
家族で統一するのは、次の3点です。
- 指示に使う言葉
- してよいこと、いけないこと
- できたとき、要求されたときの反応
⑤ 痛み・暑さ・呼吸を、しつけより優先する
フレンチブルドッグの反応が急に変わったときは、体調不良が隠れている場合があります。触ると怒る、散歩を嫌がる、指示への反応が鈍くなったという変化は、痛みや呼吸のつらさでも起こります。
しつけを強める前に、体調を確認してください。呼吸や熱中症などの注意点は、フレンチブルドッグがかかりやすい病気と健康管理で詳しく解説しています。
子犬期の社会化でやっておきたいこと
環境省の資料では、生後3〜16週ごろを、さまざまな刺激を受け入れやすい「社会化期」としています。この時期は、おすわりやふせの完成度よりも、人、動物、音、場所、体に触られることへ少しずつ慣らすことが重要です。【出典:環境省「動物の適正譲渡における飼い主教育」】
慣らしておきたいもの
- 人:家族以外の大人、子ども、帽子やマスクを着けた人
- 音:インターホン、掃除機、車、雷、工事音
- 場所:動物病院、車、エレベーター、散歩道
- 犬や動物:健康状態が確認できる、落ち着いた相手
- お手入れ:耳、口元、足先、顔のしわ、体を触られること
社会化は、怖がっている犬を無理に近づけることではありません。刺激から十分に距離を取り、おやつを食べられる程度の余裕を保ちます。嫌がったら離れ、次回はもっと弱い刺激から始めてください。
ワクチン接種が完了していない時期の外出方法や、ほかの犬との接触範囲は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

興奮しやすいときの落ち着かせ方
フレンチブルドッグでは、遊び、帰宅、来客など、人と関わる場面で興奮が高まることがあります。大切なのは、興奮した犬を力で押さえつけることではなく、興奮が上がる前に終えることと、落ち着いた状態を報酬につなげることです。
遊びは短く区切る
遊び始めは穏やかでも、時間がたつにつれて動きや噛む力が強くなることがあります。呼びかけに反応できるうちに一度止め、水分と休憩を取ります。
再開するときは、おすわりや四つ足で立つなど、落ち着いた行動を確認してから始めます。すると「落ち着くと遊びが再開する」という学習になります。
マットで休む練習をする
リビングにマットやベッドを置き、犬が自分から乗った瞬間にほめます。次に、マットの上で座る、伏せる、数秒待つという順番で時間を延ばします。
来客時だけ急に使うのではなく、普段から「ここに行くと落ち着ける」と教えておくことがポイントです。クレートを使う場合も、罰として閉じ込める場所にはしません。
帰宅時は静かに対応する
帰宅するたびに高い声で呼び、すぐ抱き上げると、帰宅そのものが大きな興奮イベントになります。玄関では静かに入り、四つ足が床についた状態や、おすわりができたときに声をかけます。
【📷画像:マットの上で落ち着いて伏せるフレンチブルドッグ】
甘噛み・噛み癖への対策
子犬の甘噛みは、遊びや探索、歯の生え変わりに伴って見られる行動です。口を使うこと自体をすべて止めるのではなく、噛んでよいものと、人の手や服を区別して教えます。
手を噛んだときの手順
- 手を激しく振らず、動きを止める
- 声や視線をいったん外し、遊びを中断する
- 落ち着いたら、噛んでよいおもちゃを渡す
- おもちゃを噛んだら、静かにほめる
大声を出したり手で払いのけたりすると、その反応自体を遊びとして受け取る犬もいます。手を使ってじゃれさせる遊びも避けます。
噛む回数が増えたときは、叱り方より生活を見直してください。眠気、退屈、空腹、遊びすぎによる興奮が背景にあることがあります。
⚠️ 体に触れたときだけ噛む、皮膚や耳のケアを急に嫌がる、唸ってから強く噛む場合は、痛みや皮膚トラブルが隠れている可能性があります。無理に触らず、獣医師へ相談してください。

飛びつきをやめさせる方法
飛びついた犬を抱く、声をかける、前足をつかむと、犬にとっては注目を得られたことになります。
飛びつきへの基本対応は、次のとおりです。
- 飛びついている間は、体と視線を静かに外す
- 四つ足が床についた瞬間にほめる
- おすわりができたら、人が近づく、なでる、遊ぶ
- 再び飛びついたら、人が離れる
家族だけでなく、来客にも事前に対応を伝えておきます。練習中はリードやベビーゲートを使い、勢いよく相手へ到達できない環境を作ると成功しやすくなります。
四つ足が床についた状態をほめ、飛びつく代わりの行動を教える方法は、動物医療慈善団体PDSAのトレーニング案内とも一致しています。【出典:PDSA「Basic training for puppies」】

散歩の引っ張りを改善する練習
散歩で前へ進むことは、犬にとって大きな報酬です。引っ張ったまま前進できる状態が続くと、「引っ張れば目的地へ近づける」と学習します。
室内から練習する
最初は刺激の少ない室内で行います。
- 犬が飼い主の近くに来たらほめる
- 一歩進み、リードが緩んでいたらほめる
- 数歩ずつ距離を延ばす
- 室内でできたら、玄関前、静かな屋外へ進む
屋外で引っ張ったときは、強く引き返さず、その場で止まります。リードが緩んだら再び進みます。最初から長い距離をきれいに歩かせるのではなく、数歩の成功を重ねてください。【出典:RSPCA「Train Your Dog to Stop Pulling On The Lead」】
首に負担をかけない
短頭種では、首を強く締める道具や急なリードショックを避け、体に合ったハーネスを選びます。暑い時間帯の散歩や、呼吸が乱れた状態での練習も行いません。【出典:RSPCA「Why prong collars are harmful to dogs」】
呼吸音がいつもより大きい、舌や歯ぐきの色がおかしい、ふらつく、座り込むといった異変があれば、しつけを中止して涼しい場所へ移動し、動物病院に連絡してください。

トイレトレーニングのコツ
トイレは、失敗を叱るより成功しやすいタイミングと環境を作るほうが早く進みます。
基本の手順
- サークルなど、管理しやすい範囲から始める
- 起床後、食後、遊んだ後、寝る前にトイレへ誘導する
- 排泄できた瞬間に、その場でほめる
- 成功が続いたら、行動できる範囲を少しずつ広げる
- 失敗しても叱らず、においが残らないよう静かに片づける
失敗を叱ると、「排泄したこと」ではなく「人の前で排泄したこと」を叱られたと学習し、隠れて排泄する場合があります。
体がしっかり収まり、方向転換できる広さのトイレを用意します。暑さ対策で水を飲む量が増えた日や、体調が悪い日は、排泄の間隔が変わることもあります。
成功直後にほめ、失敗を罰しない手順はRSPCAのトイレトレーニング案内でも推奨されています。【出典:RSPCA「How To Toilet Train Your Puppy or Dog」】

吠えへの対策は理由を分ける
吠えを一律に無視しても、原因が違えば改善しません。まず、どの場面で、何が起きる直前に吠えるのかを記録します。
要求吠え
遊び、おやつ、抱っこを求めて吠える場合は、吠えている最中に要求をかなえません。静かになった瞬間に、おすわりなど別の行動を促してから応じます。
来客・物音への吠え
インターホンの音量を下げる、窓から外が見えないようにする、玄関から距離を取るなど、反応する刺激を弱めます。そのうえで、音が鳴ったらマットへ移動する練習をします。
不安による吠え
留守番中や特定の場所で吠え続ける場合は、不安や恐怖が関係している可能性があります。罰を加えると不安を強めるおそれがあるため、原因を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
留守番は短時間から練習する
人との距離が近いフレンチブルドッグにとって、急な長時間留守番は負担になることがあります。
- 別の部屋へ数秒移動するところから始める
- 犬が落ち着いているうちに戻る
- 数秒から数分へ、少しずつ時間を延ばす
- 出発と帰宅を大きなイベントにしない
- 留守番中も安全な室温を保つ
知育トイやフードを詰めたおもちゃを使う場合は、誤飲しないサイズを選び、飼い主がいる状態で安全に使えることを確認してから留守番に取り入れます。
留守中の吠え、破壊、よだれ、排泄の失敗、出口付近を傷つける行動が続く場合は、単なる退屈ではなく分離に関する不安かもしれません。叱らず、獣医師や行動の専門家へ相談します。
留守番を短時間から段階的に練習し、犬が不安になる前の段階へ戻す進め方は、RSPCAの案内にもとづいています。【出典:RSPCA「How to Train Your Dog to Stay Home Alone」】
フレンチブルドッグのしつけで避けたいNG対応
大声や体罰で行動を止める
大声、叩く、首輪を強く引く、犬を押さえつける方法は使いません。米国獣医行動学会(AVSAB)は、しつけと行動修正には報酬を中心とした方法を用い、痛みや恐怖を与える方法を避けるよう勧告しています。【出典:AVSAB「Humane Dog Training Position Statement」】
罰で一時的に動きが止まっても、犬が何をすればよいかは伝わりません。不安や人への警戒を強める可能性もあります。
「頑固」と決めつけて同じ指示を繰り返す
反応しないときは、指示を理解していない、周囲の刺激が強い、報酬に魅力がない、疲れている、暑い、体調が悪いといった理由を確認します。
同じ指示を何度も繰り返すより、静かな場所に戻り、成功できる難易度まで下げてください。
興奮を運動だけで解消しようとする
疲れさせれば落ち着くと考え、暑い中で長く走らせるのは危険です。短頭種は熱に弱く、フレンチブルドッグは熱中症リスクが高いことが報告されています。【出典:Royal Veterinary College「Flat-faced breeds and Heat Related Illness」】
運動だけでなく、においを嗅ぐ遊び、フード探し、短いトレーニングなど、体への負担が少ない刺激も取り入れます。

年齢別に見るしつけのポイント
子犬期(〜6か月ごろ)
社会化、トイレ、甘噛み、お手入れへの慣らしを優先します。完成度より、怖い経験を増やさず、人と学ぶことを楽しいと感じてもらう時期です。
思春期(6か月〜1歳半ごろ)
周囲への関心が強くなり、今までできていたことが不安定になる場合があります。反抗と決めつけず、刺激の少ない場所に戻って練習します。
成犬期(1歳半〜7歳ごろ)
生活のルールを維持しながら、マット、呼び戻し、散歩など日常で使う行動を繰り返します。体重と呼吸の状態に合わせて運動量を調整します。
シニア期(7歳ごろ〜)
聴力、視力、関節、背骨、呼吸などの変化で、これまでの指示に反応しにくくなることがあります。叱らず、合図や環境を調整し、変化が急なら受診してください。
専門家に相談したほうがよいケース
次のような様子が見られる場合は、家庭だけで対応を続けないでください。
- 皮膚、耳、足、背中など、特定の場所を触ると怒る
- 唸る、歯を当てる、本気で噛む
- 留守番中の吠えや破壊が続く
- 人や犬への飛びかかりが強くなっている
- 音や場所に強くおびえ、食べ物も受け取れない
- 行動が急に変わった
- 軽い運動でも呼吸音が大きい、回復に時間がかかる
痛み、皮膚炎、耳の不調、呼吸の問題などが行動に影響することもあります。まず獣医師へ相談し、必要に応じて行動診療を扱う獣医師や、報酬を中心とした方法を使うトレーナーにつないでもらいましょう。
まとめ
フレンチブルドッグのしつけでは、犬を興奮させてから抑えるのではなく、落ち着いていられる環境を作り、その瞬間をほめることが基本です。
- 人が好きで遊び好き。人との関わりを報酬に使いやすい
- 飛びつく代わりにおすわりするなど、してほしい行動を教える
- 甘噛みは叱るより、噛んでよいおもちゃへ誘導する
- 散歩は室内練習から始め、リードが緩んだ状態をほめる
- 1回数分を目安に、涼しい場所で短く練習する
- 反応が鈍いときは、頑固さより暑さ、呼吸、痛みを先に確認する
- 大声、体罰、強いリードショックを使わない
フレンチブルドッグは、家族の反応をよく見ています。望ましい行動に同じ反応を返し続ければ、生活のルールは少しずつ伝わります。
一度に完璧を目指さず、短い成功を毎日の中で重ねていきましょう。
💡 フレンチブルドッグの気質はフレンチブルドッグの性格と特徴、呼吸や暑さへの注意点はフレンチブルドッグがかかりやすい病気と健康管理で解説しています。



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